2023.07.24 トピックス 【国際学部】国際交流基金(JF)職員によるご講演「職業としての国際交流」 教育・研究


 国際交流の仕事とはどのようなものでしょうか?
 私たちは日常生活の中で、何らかの形で国際交流の体験をしていますが、国際交流の仕事についてはイメージがつかないという方も多いはずです。国際交流という華やかな舞台で活躍しているアーティストや知識人、あるいは楽しく国際交流の場に参加されている方々と違って、国際交流の場を私たちに提供するために働いている方々は日々舞台裏で慌ただしく動いています。

 国際学部の張雪斌ゼミは国際政治学をテーマとしており、学生の皆さんは国政政治学の理論を学びながら、アジア太平洋地域の国際関係について日々研究をしています。しかし、理論的な知識だけでは、現場の仕事を理解することができません。そこで、ゼミでは定期的に専門的な知見をお持ちのゲストスピーカーをお招きしています。
 今学期(6月23日)は、独立行政法人国際交流基金(JF)の大内洸太さんに「職業としての国際交流」についてご講演をいただきました。


 

国際交流を支える仕事

 国際交流基金(JF)は総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の専門機関です。日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむため、「文化」と「言語」と「対話」を通じて日本と世界をつなぐ場をつくり、人々の間に共感や信頼、好意を育んでいくことをミッションにしています。

 国際交流の担い手には、文化芸術活動に携わる芸術家、作家、芸能人や、日本語教育における教師や学習者、知的交流を担う学者、研究者だけでなく、私たちのような一般の市民、青少年もいます。大内さんたちJF職員は主催・共催・助成等の様々な形で国際交流の担い手に舞台を提供しています。より多くの人々が国際交流に参加し、日本と諸外国の相互理解を深めると同時に、共に新たな価値を創出するために、JFはネットワークとプラットフォームを構築しています。

 プロとして多くのパートナーたちと一緒に国際交流活動を運営し、支える仕事は一見華やかに見えますが、実際には大内さんの普段のお仕事は、各分野の専門家や関係団体等との打ち合わせに加え、総務・経理等の事務作業や、事業実施にかかわる書類作成・業者への各種手配依頼のようなデスクワークが大半だそうです。大内さんのご講演からわかるように、よりよい国際交流活動を実現するには、国際交流をやりたいという情熱に加え、外国語スキル、ICTのスキル、プロジェクト運営の能力や国際関係への理解が必要です。

 

学生たちの声



 学生たちは熱心にゲストスピーカーのお話を聞き、質疑応答の時間に積極的に大内さんと意見交換を行いました。以下は一部の学生の声を紹介します。
 
キタミさん
 国際交流基金の存在は知っていましたが、どのような事業を行っている機関かわかりませんでした。今回のお話で、国際交流基金が文化・言語・対話を通じて世界を結ぶための交流事業を担っている機関であることがわかりました。
 日本と諸外国の交流を支えるために、国際情勢の変動に関わらずに事業を続けていることに感心しました。日本と諸外国の相互理解を深め、関係を改善するために、国際交流基金の職員たちが交流の担い手となる人材の育成・幅広い層の対日理解の促進・日本の文化の発信・地域活性化などの取り組みをしていると学びました。そして、国際交流基金が事業の戦略性を強化しつつ、人的ネットワークの形成に力を入れている点も興味深かったです。
 私は現在難民、移民など国境を超える人の移動について研究をしていますが、今回のご講演は非常に参考となっており、自分の研究の幅を広げるためのよい機会となりました。
 
イワタさん
 コロナが落ち着きつつある今は、どこに行っても外国人の方が戻ってこられたと感じています。日本にやってくる外国人の方には、日本の文化に惹かれたという方が多く、実際日本に行き、日本の文化に触れてみたいという方も多いのではないかと思います。ゲストスピーカーのお話にもあったように、日本の文化といえば、茶道や、歌舞伎、浄瑠璃などをイメージしやすいですが、最近では、漫画やアニメといったポップカルチャーも人気があるようです。国際交流基金の方々には今後もこのような日本の魅力を多くの方に発信していただけたらと考えています。
 今回のご講演を通じて、国際交流活動には実際多くの資金が必要だと気づきました。国際交流基金自身の資金だけでなく、国際交流をしたいと声を上げた多くの組織や方々をつなげて、協力のネットワークを構築する重要性について考えるきっかけとなりました。
 
ワキタさん
 私は自身の経験から、ゲストスピーカーのお話に共感できるポイントがたくさんありました。
 私はカナダで留学をした経験があり、日本とカナダでも文化の違いを感じたこともカルチャーショックを受けたこともありました。相手の文化を知って、それを尊重することはもちろん大切ですが、同時に自分の国の文化も知ってほしいと私も感じました。一方、日本人の中に海外に興味がない人もいるが、交流のためには外国人が日本に興味を持ってもらうだけでなく、日本人も外国に興味を持つ人が増えればと強く思っています。
 実際、日本との関係がよいとは言えない国もあり、政治の関係が国民同士にも影響を与えています。SNSでは「○○人だからでしょう?」のような偏見が飛び交っているのを見るととても残念に思います。世の中の全て人が仲良くなることは不可能かもしれないが、特定の国の国民だという理由で他人を中傷するような人が減ってほしいと思います。
 私にとって、海外の方と交流できたのはすごく楽しかったです。育った環境や母国の言語も違う中、一緒に話ができて、ご飯を食べるだけでも特別な時間を過ごせました。ゲストスピーカーが紹介した国際交流の活動は私にとっても魅力的であり、より多くの人に参加してほしいと感じました。そして、国際交流は様々な面でそれを支える仕事をしている方々がいるからこそできていることを忘れてはならないと思いました。