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アジア太平洋研究センター

ご挨拶

 大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター(CAPP)のウェッブサイトをお開きになった皆様に、ご挨拶申し上げます。東日本大震災で、地震・津波・原発事故から立ち上がろうとしている日本列島、本大学は大阪にありますが、本研究センターは、東京麻布台セミナーハウス内にあって、3月11日のショックを、東京タワーの近くでも経験しました。

 この経験を大事にして、私たちは大阪と東京とをつなぐだけでなく、東北地方ともつないでいく必要を痛感しています。東日本大震災、とくに原発災害は、日本だけの災害ではなく、アジア太平洋をまきこむようなかたちで、これからも地域の平和と発展にとって計り知れない影響を持った大惨事だったと思います。 私たち、この日本列島に住む市民は、おそらく1945年の敗戦時に匹敵する深い反省をもって、絶対安全といわれてきた原子力の平和利用に支えられてきた、これまでの「成長への道」とは別の社会作りを迫られています。このことは今日の日本の中で、ひとつの常識になりかけています。しかし、その意味をどう解釈するかについては、多様な見解があり、以下で記すのは、この「ご挨拶」を送る武者小路個人の意見で、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センターの見解ではありません。「人間味」をこの「ご挨拶」に含ませることをおゆるしください。

 私の意見では、東日本大震災が私たちに示している課題は、1945年以来のとても大きな課題です。1945年の敗戦後の深い反省をせまられていたのは、日本国の侵略の責任を背負う覚悟をした日本国民だけでした。今回の反省は、自然を完全支配できるとして、原子力エネルギーをもとに大量生産・大量消費・大量廃棄の経済を推し進めてきたことについての反省です。別の経済生活を見つけ出すことは、日本国籍の有無にかかわらず、日本列島に住むすべての市民が一緒になって考えるべき課題です。 もっと正確にいえば、アジア太平洋の国々の市民たちと共有する課題なのです。自然への畏敬の念が足りなかったことが、人間の安全を保障しきれない現状をつくりだしました。このことの反省は、今回の災害でその尊い命を落とされたかたがたへの慰霊の気持ちを支えにしています。日本列島で、この災害を再び繰り返さないという、われわれの反省は、しかし日本列島の中だけでおわるべきものではありません。

 アジア太平洋地域に住むすべての市民の前に開かれた希望の未来につながるものでなければ、日本人の独りよがりといわれても仕方がない「反省」になってしまいます。競争万能の今日のグローバル社会のかなたに、分かち合いの社会をつくる。1945年に、日本国民が、世界の諸国民が平和に生存する権利を認めました。しかし、その後にたどった経済の高度成長路線は、今回の災害を準備しました。私たちは、もう一度、1945年の日本再生の原点に立ち返って、「恐怖」と「欠乏」をまぬかれて平和に生存できる道をさぐろうとしています。この模索は、日本国民だけ、日本列島に住むさまざまなアイデンティティを持つ市民とその母国であるアジア太平洋諸国が、みなで一緒になってすすめるのでなければ、模索する暗中のさきに新しい巧妙をみつけることはできないでしょう。
それだからこそ、私たちは、アジア太平洋における平和、人権、人間の安全保障を対象とした国際研究機関として、2003 年4月に、東京都港区にある大阪経済法科大学東京麻布台セミナーハウス内に設置されたCAPPを研究の拠点にして、「多文化共生」というコンテクストにおいて独自の調査・研究を進めているのです。

 当研究センターは、「学問の自由」のもとで、実践的な活動に携わる研究者たちの相互協力と共同作業を通じた学際的・普遍的な研究の場を提供することを目的としています。当研究センターは、様々な分野・領域の研究者を歓迎し、彼ら・彼女らが国際的な研究仲間と対話できるようにする一方で、東日本の災害地に住む人々との結びつきをも深めていきたいと考えます。

 以上のような角度からアジア太平洋の諸問題を研究し、パートナーシップを深める際に取り上げるべき問題は山積みの状態です。何より必要なことは開かれた研究体制をつくりだすことです。そのためにも、当研究センターでは、このページや「CAPPブログ」をご覧になっているすべての方々からのご意見・ご提案を歓迎しております。CAPPは知的関心をもつ人なら誰でも参加できるような、人々に共有されている普遍的な価値や問題について、ともに考えあうことのできる「場」となることを念願しています。このページと「CAPPブログ」は、このような考えを実践するための試みにほかなりません。

 今後もCAPPは、アジア太平洋における多文化間の現実に根ざした平和、人権、そして人間の安全保障についての対話・研究をさらに促進させていきます。ここまでお読み下さったことに感謝申し上げるとともに、みなさまがCAPPの研究活動にいろいろな形で参与してくださることを心からお待ちしております。

2011年4月1日
大阪経済法科大学
アジア太平洋研究センター所長
武者小路公秀

大阪経済法科大学 アジア太平洋研究センター所長 武者小路公秀

CAPPブログ 市民アカデミア2011

所長プロフィール

武者小路公秀(むしゃこうじ・きんひで)1929年ベルギー生まれ。学習院大学政経学部卒業。パリ大学、プリンストン大学留学。学習院大学、上智大学、国連大学(副学長)、明治学院大学、フェリス女学院大学、中部大学教授を経て、現在、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長。専門は国際政治学、国際関係論。著書・・・『人間安全保障論序説グローバル・ファシズムに抗して』(国際書院)『人間安全保障共同体の歴史的構造:人道援助と経済協力の背後にある現実』(高橋一誠/武者小路編)『国際政治を見る眼』『転換期の国際政治』(岩波新書)『人の世の冷たさ、そして熱と光』(解放出版社)他多数。

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