2022.11.22 トピックス 【国際学部】ディベート大会~国際法の観点から~(來田ゼミ) 教育・研究



国際学部來田(らいた)先生の専門演習(2年生)では、10月14日(金)と21日(金)の2回の授業にわたり、ディベート大会を開催しました。來田先生は国際法を専門としており、同演習の春学期には国際法の入門書の読解に取り組み、秋学期も国際法に関連づけた学修を展開しています。ディベートは1つのテーマについて肯定側と否定側の二手に分かれて行うものです。肯定側・否定側の割り当ては來田先生が行うため、常に自分の考え方と同じ立場になるとは限らないところが難しい点です。



 

このディベート大会は、専門演習の目的である「基礎的なアカデミックスキル及びグローバル社会の諸課題に対する関心の向上」「他者と協働して課題に取り組むためのコミュニケーション能力の修得」を目指し、国際共修の観点から取り組むものです。演習内では日本人学生と留学生混合の4チームを作成し、2つの課題テーマに対してそれぞれチーム対抗でディベートをします。ディベートの勝ち負けはプレゼンテーションの優劣で決め、どちらの意見が勝利したかの審査も学生が行いました。來田先生は学生たちに準備段階において必ず先行研究や政府の一次資料※の調査・収集を行うように指導されていました。また、国際共修の観点から、日本人学生と留学生の間で内容を丁寧に議論したうえで、役割分担をし、ディベートに臨むように促していました。それぞれのグループが多くの時間を費やし、準備を進めていきました。果たして、どのようなディベート内容になったのでしょうか。
 
※一次資料
対象とする時代において制作された工芸品、文書、日記、写本、自伝、録音・録画、その他の情報源を指す。これはそのテーマに関する大元の情報として利用される。
 


 

民間テロの位置づけとは

 

10月14日の第1回ディベート大会では、「テロは絶対に否認されるべきか」という問題を取り上げました。來田先生は、イスラム過激派テロ組織アルカイダによって行われた、アメリカ合衆国に対するテロ攻撃「9.11同時多発テロ事件」や、イスラエルとパレスチナ自治政府の間で続いている暴力的な闘争である「イスラエル・パレスチナ問題」に言及するよう指導されていました。学生たちは、9.11同時多発テロ事件とそれに対する国際社会の反応を踏まえながら、討論を進めていきます。テロは関係のない市民をも犠牲にする点では容認されるべきではないという意見もあります。しかし、「イスラエル・パレスチナ問題」については、パレスチナにとってイスラエルに抵抗するための有効な手段は自爆テロしかないという見方もあります。パレスチナによる自爆テロのように、紛争当事国間に圧倒的な戦力差がある場合の民間テロの位置づけについて白熱した議論を交わしていました。
 
クリミア大橋の爆発事件を「テロ」として非難したプーチン大統領の発言を受け、ロシア・ウクライナ問題を取り上げながら、「テロ」の位置づけや捉え方に頭を悩ませている様子が印象的でした。これらの議論を踏まえ、学生による審査の結果、絶対否認派が勝利しました。來田先生は「テロは否認されるべきだ」という意見の勝利を前提とする議論に双方が果敢に取り組んだことに対し、学生たちの討論内容を評価していました。

 

 


 

日本の最高刑のあり方
 

10月21日の第2回ディベート大会では、死刑制度は廃止すべきかを討論。死刑は、日本では最高刑であり、死刑があることで犯罪抑止の効果もあるとされています。しかし、被告人の命を奪うことでもあり、人権上から見て認められないと考える人もおり、海外では死刑を廃止する国も多くあります。
今回のディベートに関して、來田先生は「死刑をめぐる国際情勢」「拷問等禁止条約※」に言及するよう指導。国際社会において死刑廃止が主流になる中、日本の最高刑である死刑を存置すべきかそれとも維持すべきかについて、主に人権の観点から議論が交わされました。死刑の実施状況や世論調査などのデータを用いた議論を踏まえ、学生による審査が行われた結果、死刑存置派が勝利しました。來田先生からは、より客観的・説得的な議論を展開するため、拷問等禁止条約とその国際委員会による勧告的意見を参照し、国際社会における議論状況を把握するようフィードバックがありました。

 
※公的資格で行動するものが情報や自白を得るために故意に思い身体的・精神的苦痛を与えることを禁止する国際法
 
 
どちらのディベートにおいても、日本人学生と留学生が協力しながら発言する様子がみられました。相手方に対する反論や質疑応答といったパートでは、それまでの議論の内容を理解し、言うべきことをその場で論理的に組み立てなければなりません。チームとして何を主張する必要があるのか、短い時間の中で意見をまとめ、お互いに補い合うことで発表につなげていました。
授業後の振り返りアンケートでは、「精神論ではなくデータに基づく立証が必要だと実感した」「準備不足を認識したので次はもっと情報を調べたい」などといったディベートをするうえで国際法や、実際に起きた事象についての調査や理解が必要なことを実感した意見がありました。また、「自分の個人的な考えとは逆の立場でディベートを行った結果、反対意見も受け入れられるようになった」「チームでコミュニケーションを取りながら意見を補強していくのが楽しかった」などといった感想もあり、留学生を含めたグループ内でのチームワークの大切さも学べたようでした。

 

 

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來田ゼミでは、国際法の入門書の読解や政府の一次資料など専門書を読み解き、国際社会について研究を深め、国際課題についてディベートを実施するなど、実践的な授業を行っています。今後は「少年保護規定は廃止すべきか」や「日本社会において労働者は働きすぎか」という課題テーマに取り組むことを予定しています。国際法について理解を深めたい方はぜひ來田ゼミへ。
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