2022.09.12 トピックス 【経営学部】日本のメンバーシップ型雇用を考える 城戸先生による「人的資源管理論」  学生生活 教育・研究

今回は経営学部の特色ある講義を紹介します。
城戸先生による「人的資源管理論」は、日本の組織における人的資源の管理、わかりやすく言うと「職場における働き方」などについて、諸外国と比較しながら学修する講義です。
第14回目の講義では日本の雇用慣行や大部屋主義という働き方について考えています。

 

突然ですが「ジョブ型雇用」という言葉を皆さんはご存知でしょうか?

ジョブ型雇用とは、ある一定の職種のみにつくことを前提に募集する求人のことを言います。テレビ局のアナウンサー職、新聞社の記者職などがその典型です。営業職や事務職、バイヤー、マーケターなどにおいても、最近は職種を限定しての募集が行われることがあります。近年、資生堂やNTT、三菱ケミカルなど大手企業が続々とジョブ型雇用の導入を表明していると報じられています。なぜ、今このジョブ型雇用に注目が集まっているのでしょうか。今回、このジョブ型雇用について、マスコミ等では言われていない「問題点」などについて学修します。

ジョブ型雇用は、欧米では一般的です。新入社員は、営業や事務など、その職務の専門職(スペシャリスト)として採用されます。本人の同意のない異動や昇進はなく、雇用されている期間は、同一の職務に就くことになります。

一方、現在多くの日本企業は、メンバーシップ型雇用での採用をしていると言われています。新規学卒の新入社員は「総合職」又は「一般職」として、本人の適性に応じて会社が配属を決めていきます。本人が希望している担当職務に就けないことも多く、異動、昇進、場合によっては転勤も、本人の同意なく行われます。

ここまで聞くとジョブ型雇用は、自分のやりたい仕事が必ずできる魅力的なものに聞こえますよね。でも、ジョブ型雇用は良い面ばかりがあるわけではありません。

例えば、ジョブ型雇用は経験者採用を前提としています。「職務経験のない新入社員」を採用することはありません。初めから「任された業務を完全にこなせること」が採用条件なのです。その職務(ポスト)についてから、そこでの仕事の仕方を覚えていくというものではなく、即戦力での働きが求められます。そこには、求められる仕事をするから雇っているのであって、現在の能力は少し足りないが今後の将来性に期待するというような考え方はありません。社員の人材育成は会社の側では基本的に考えず、個々の社員が自分の昇進や転職のために考えるものとなっています。


ではジョブ型雇用では、職務経験のない学生はどうやって就職するのでしょうか?

大学卒業後、職業訓練校に通ったり、長期間、無給のインターンシップを続けるなどにより、その経験をもって採用面接を受けるそうです。そのため、若年層の失業率が、上の世代よりも高くなっています。大学卒業後に、本格的な就職の前に職務経験を積む期間が必要となってくるうえに、職業選択の幅は否が応でも狭まるといったデメリットもあることでしょう。

対照的にメンバーシップ型雇用は、新入社員を「長期雇用」し、「育成」することを前提としています。職務経験のない学生を「総合職」や「一般職」として一括で雇い入れ、上司の管理のもと、一人前になるまで、職務経験を積みながら仕事を覚えていきます。ゆくゆくは昇進し、今度は部下を育成する立場になるまで長期間雇用することを前提に採用するのです。就活生は、大学生活までで積み上げた経験のみで、職務経験がなくても、就職先を自由に選択することができるため、職業選択の幅を広げることができ、職務経験の乏しい若年層にとっては、会社や社会が優しくサポートしてくれている仕組みだとも言えます。

 

メンバーシップ型雇用は、「人材育成」を基盤としたシステムで、終身雇用や年功序列といったものと相互に関連し合い、日本社会で練り上げられてきた雇用システムと言えるものです。

しかしながら、現代日本においては、昇進や異動を望まない若者の増加や、通常業務+部下の育成業務等による管理職への増加する業務負担、仕事を通じての成長を志向しない者の増加など、メンバーシップ型の雇用を持続しにくい環境が生まれつつあります。このような現代社会の状況に対応するために、欧米諸国が取り入れている「ジョブ型雇用」に注目する企業が増えてきているそうです。

就職活動や、働き始めた後の未来を見据えて講義を聞く学生たちの姿勢は真剣そのもので、講義終了後の質疑応答の時間でも、それぞれのメリット・デメリットについての質問が交わされていました。終了後に質問に行く学生もおり、熱心に学修に取り組む様子が伺えました。



皆さんはこれからどのような働き方を望みますか?
物事には必ず、「良い面」と「悪い面」の両方が存在し、社会に正解はありません。どのような働き方をするのかは個人の選択によります。今回の授業では、これから社会にでる学生にとって自身の将来や働き方について考える貴重な機会となりました。自身の「働き方」や組織マネジメントについて学んでみたい方はぜひ、経営学部について調べてみてくださいね!

 
人材・組織マネジメントコース
経営学部では、2年次からコースを選択することができ、その中の一つに組織やマネジメントといった「人」に着目しつつ経営を学ぶ「人材・組織マネジメントコース」があります。「経営学」のうち、この「人的資源管理論」は、組織目的の達成のために、「人」をどのように動かすのかを学ぶ講義です。組織の動かし方だけではなく、自身の働き方を考えることも学びのうちの一つ。興味を持った方は、ぜひ経営学部について調べてみてください。
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参考資料 ジョブ型雇用とは 職務を明確化、専門性を高める きょうのことば.日本経済新聞.2022-01-10,
日経電子版, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC07CB90X00C22A1000000/, (参照2022-09-06).