2022.06.28 トピックス 【国際学部】カルロス・ゴーンはなぜ捕まえられない?(菅原ゼミ:国際法) 教育・研究 留学・国際交流



 国際学部2年次演習では、「グローバル社会の諸課題を多角的な視点から知る」をテーマにしています。国際学部の学びは、法政治・文化、経済・経営、歴史・社会、コミュニケーション・情報の4分野からなりますが、菅原ゼミでは、国際法の視点からアプローチしています。
 今日は、「主権:管轄権の衝突と調整」について、テキストから基本知識を学んだのちに、カルロス・ゴーン逃亡事件を取り上げ、グループディスカッションを行いました。
2018年日産のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたニュースは世界に衝撃を与えました。
 保釈中の2019年末にレバノンに逃亡してしまうのですが、日本の警察はゴーン氏の居場所が分かっているのになぜ逮捕できないのでしょうか?
各グループでこの事件について調べ、授業で学修したことを振り返り、解決の糸口を探っていきました。結論を出すのに苦戦しているグループもあれば、他国に逃亡した外国人犯罪者を引き渡す条約などが関係するのではないか?と考察するグループもありました。






 
犯罪人の引き渡しにも条約がある?

 犯罪人引渡条約とは、日本で罪を犯した人が海外へ逃亡した場合、他国で身柄を確保し、日本に引き渡してもらう条約のことです。日本はアメリカと韓国の2ヵ国と締結。レバノンとは条約を結んでいません。日本で犯罪行為をした人を裁くには、多くの国との間に犯罪人引渡条約を結べばいいのでは?そんな疑問がわいてきませんか?しかし、引渡条約を締結することで、自国に犯罪人を引き渡してもうことが約束される一方、海外で罪を犯した日本人がいた場合、他国に引き渡しをしなければなりません。引渡条約がなくても引き渡しは可能ですが、国外で犯罪行為を行った自国民は引き渡さないという「自国民不引渡原則」が大多数の国で採用されているため、簡単に引き渡しを行ってもらえません。これは自国民が海外で不当な扱いを受けることを防ぐ国民を守るためでもあります。これにより、未だにゴーン氏の身柄は日本に引渡されないのです。しかし、ゴーン氏の国籍国であるフランスも仏自動車大手ルノーの会社資金を不正使用した疑いで、ゴーン氏に対する国際逮捕状を発付し、レバノンにおいてフランス司法官による事情聴取が行われるなど動きを見せています。
 ゴーン氏逮捕から4年。果たしてこの問題はいつ解決するのでしょうか。