2021.01.16 トピックス ILO(国際労働機関)の協力の下での学習プロジェクトが完結(国際学部・菅原ゼミ) 教育・研究 留学・国際交流

 国際学部の演習Ⅰ(2年生対象)の菅原ゼミは、グローバル社会の課題を多角的な視点で捉えることをテーマに、秋学期に課題解決型学習(PBL)の一環として、EU(欧州連合)拠出の下ILOとOECD(経済協力開発機構)が共同実施する「G7における女性のエンパワメントプロジェクト(WE EMPOWER G7 Project)」の支援を受けて、学習プロジェクトを実施しました。
 内容は、第11~14回の授業において“職場におけるジェンダー平等とグッドプラクティス”に焦点を充て、ILOが2020年に作成したレポート「Empowering Women at Work(仕事における女性のエンパワーメント~ジェンダー平等のための企業政策と実践)」を基に、学生自らがジェンダーとは何か、ジェンダー不平等は職場でどのような課題となるかの考察や、企業のグッドプラクティスとして富士通、IKEA、住友化学、三菱UFJ銀行のリサーチ等を行ってきました。
 そして、1/15(金)にILOとの意見交換の場として、ILO駐日事務所プログラムオフィサーの田中竜介様にZOOMにて登壇いただき、国際労働機関設立の目的や役割、2019年のILO総会において8年ぶりに条約制定となった『仕事の世界における暴力とハラスメント』の国際労働基準や、日本政府の取組、ILO駐日事務所の取組等について、国際法の実際の実践事例等を紹介いただきながら教えていただきました。
 また、田中様のお仕事として、政府に対し、国際労働基準を広めることや、労働環境を変えていくための働きかけを行っていること、グローバルサプライチェーンを通じて企業の働き方を変えていくこと、東京オリンピック・パラリンピックにおいて強制労働・児童労働によって作られたものが大会で使用されないための働きかけをされているなどのお話は、学生が学修している国際法が実際の社会でどのような役割を果たすのかがわかり、良い刺激となりました。
 そして、講義の中では、ILOニューヨークオフィスにてWE EMPOWER G7プロジェクトを統括し政策専門家として活動されているLaura Addati氏からのビデオメッセージもいただき、学生はそれぞれ真剣に視聴していました。

 

ILO田中様と学生とのディスカッション

 今回の田中様の講義やこれまで調査したILOのレポートや企業事例で感じたことを学生が田中様に直接質問し、意見交換を行いました。



 学生からは、
 「ILOのレポートで取り上げている5つの課題について、企業が実践しようとした際、実際はどのような難しさに直面しているのか」
 「日本企業の中でも、育児休暇制度や介護休暇制度が整ってきたのは理解できたが、実際の現場は制度を取得できやすい環境にあるか」
 「同一価値・同一労働賃金の取り組みをしている多くは大企業で、資金面で余裕のない中小企業はどのような取り組みを行っているのか」
 など、多くの質問があり、田中様からは「ジェンダーへの認識はさまざまで、社会の中での理解は変わっていくもの。企業の中でも意識を変える必要があります。学生の皆さんが持っている価値観は現在と将来の社会を支えており、社会にとって重要な財産です。課題を発見した時には、同じような考えや境遇における人たちと共有し、変化のために声をあげることが大切です」など、それぞれの質問に丁寧にご回答いただきました。

 今回のILOから協力いただいた学習プロジェクトを通して、学生が学修している国際法が現実社会にどのような役割を果たすのかについて認識を深めることができたとともに、約2年後、就職した際に、企業の責任者や労働者として持つべき視点を持つことができ、今後のキャリア形成に大きく役立ったのではないでしょうか。

国際学部菅原絵美准教授(国際法、国際人権法)