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教育研究 2019.01.18

「公務員特別演習Ⅰ」(公安職)で、少年犯罪被害当事者の方の講演を実施

 1月10日(木)に、公務員特別演習Ⅰ(法学部石川英樹准教授、大場史朗准教授担当)のゼミで、「少年犯罪被害当事者の会」代表の武るり子さんにお越し頂き、ご講演いただきました。この取組みは、犯罪被害者遺族の心情や背景等を少しでも理解し、犯罪の深刻さと現在の刑事司法の在り方を考えることを目的としています。武さんには昨年に引き続き、ご来学いただき、警察官志望の学生にとって貴重な機会となりました。

ご講演「犯罪被害者遺族になるということ~少年犯罪で息子を奪われた母の想い~」

 武さんは、1996年11月、長男の孝和さんを少年の一方的な暴力によって殺されました。1997年に同じような境遇の家族とともに「少年犯罪被害当事者の会」を結成。以来、現在まで少年法制の見直しを求め活動されています。また、現在、少年法改正等を検討している法務省法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の委員でもいらっしゃいます。
 武さんは、はじめに、当事者の会の成り立ちについてお話になりました。そして、病気をもった孝和さんをいかに大事に育ててきたかということ、突然亡くなったご子息にご自身の日頃の気持ちを伝えられなかったご経験から、人に対して日頃から自分の思いを伝えることがいかに大事かということをお話されました。

犯罪被害によって経験した地獄

 マスメディアでは犯罪の重大性が大きく報道される一方で、世の中のほとんどの人は重大犯罪の被害当事者になったことはないという実情があります。しかし、当事者でなければ犯罪被害の深刻さは到底わかり得ないはずです。
 武さんからは、実体験をもとに犯罪被害の重大性を教えていただきました。日常、何気なくしている料理や買い物ができなくなること、日常の一コマ一コマで殺された息子のことがよみがえってくることなど、家庭崩壊までつながりかねない地獄を経験したことをお話しいただきました。他方で、地域の人々が当時の自分を支えてくれたご経験から、どんな人、どんな警察官に関わるかで、遺族の精神的な負担も変わってくるとおっしゃいました。学生たちは、被害当事者に寄り添うためには、まずもって犯罪被害に対する正確な理解が必要であることを学びました。

少年法の「適正化」を目指して

 従来、加害少年の権利が高唱される一方で、被害者の権利がないがしろにされてきました。ご遺族にすら、加害少年の名前も少年審判の内容も知らされないという実務が長らく続いてきました。武さんからは、現在の少年法が人の命を大事にしていないのではないかという根本的な疑問を提起していただきました。
 現在、少年法の適用年齢を18歳に引き下げるという議論がなされていますが、武さんはこの年齢引き下げにより、少年に責任を教えることができ、また重大犯罪に対する抑止力にもなるとおっしゃいました。加害少年が遺族に真摯に謝罪していない現状、損害賠償金もほぼ支払われていない現状もご紹介いただき、警察官を志望している学生にとって大きな学びの機会になりました。

人間の苦しみと「命の大切さ」を想像できる警察官に

 警察官は犯罪捜査を主に担当する職業です。職務の過程の何気ない言葉や行動によって、被害者やそのご遺族を傷つけてしまうかもしれません。法律上の被害当事者の権利の確立はまだまだ不十分です。また、それに対応して一般の人々の被害当事者に対する意識も不十分なところがあるでしょう。ご遺族の視点から現在の刑事司法の問題点を鋭く指摘してくださった武さんのご講演は、警察官をめざす学生の心に深く響いたに違いありません。

 今後も、法学部の公務員特別演習では、実践的な活動を通して「命の大切さ」を理解できる人権感覚豊かな警察官の育成を目指していきます。

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