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    授業内容詳細

 計量経済学特論Ⅰ
   Special Lecture on Econometrics Ⅰ
授業科目区分
専門科目・経済理論科目群
担当者 井上 勝雄(教授)
テーマ 経済現象に関する実証的アプローチの分析能力の修得(1)
キーワード 回帰分析,一般化最小2乗推定
開講年度
2017
開講時期
前期
配当年次
修士1・2
単位数
2
授業の目的及び概要 消費者行動、企業活動、財政、金融、国際経済をはじめ経済学には、様々な研究領域があるが、ほとんど全ての研究領域で、数量分析をともなった実証研究がなされている。その際、計量経済学の知識と技術が用いられるので、計量経済学は経済学の学修・研究にとって必要不可欠である。
 本講義では、計量経済学の基本的な分析方法として、2変量あるいは3変量データの関係を計測する回帰分析について、講義と演習とによって学ぶ。経済データを用いて回帰分析に依る実証研究を行うとき、固有の様々な問題に遭遇する。計量経済学においては、これらの諸点を充分に理解して実証研究を行うべきである。具体的には、最初の3回で、線形数学を用いて回帰分析の基本を解説した後、非線形回帰の考察、最小メディアン2乗法、内生変数と外生変数の考察、操作変数推定、一般化最小2乗推定、攪乱項の系列相関などを考察する。最後に、連立方程式体系の議論を説明する。本講義で取り上げるテーマを修得することによって、受講生が、実際に回帰分析による実証研究に取り組んだ論文を読むことができ、また受講生自身が自らのテーマに関わる実証研究を進められるように指導する。
学修の到達目標 まず、計量経済学的な分析の基本としての回帰モデルの定式化と、これに関わる推測統計的な推論の方法を、つまり点推定、区間推定、および仮説検定のアイデアを、行列ベクトル表示によって簡単に復習する。そうした上で、計量経済学の大きな部分を占める回帰分析を詳述し、推測統計学の考え方を、実際に、適応させ得ることが学修の目標である。
 
科目の位置づけ(DP・CPとの関連) (この科目の位置づけ、学位授与方針との関係等については、履修要項p.35-37「教育課程の編成・実施の方針」及びp.44-45「履修指導と履修モデル」を参照してください。)
授業の方法 教科書は指定しないで、講義レジュメを配布する。講義レジュメは、ほぼ、Greene W.(2012), Econometric Analysis 7th-ed., Pearson.に準拠している。全体を通じて次週の講義内容について、適宜挙げる文献の予め熟読する箇所を指示する。授業中の演習およびホームワークを課して、受講生の理解を確認する。
授業外の学修(予習・復習等) 授業計画で毎回取りあげられるテーマと内容を確認し事前に予習するとともに、授業後は復習し、知識・技能の定着に努めること。
教科書・参考書 参考書:
Greene W.(2012), Econometric Analysis 7th-ed., Pearson.
竹内啓他訳『計量経済学の方法 上・下』、東洋経済新報社(Johnston, J.
and J. DiNardo(1997), Econometric Methods 4th-ed.,McGraw-Hill.)
国府田恒夫・田中一盛共訳『計量経済学序説(R.J.ウォナコット/T.H.ウォナコット共著)』培風館。
評価方法及び判定基準 毎週の授業の演習とホームワーク(50%)、中間テスト(20%)、期末試験(30%)によって総合的に評価する。
秀:90点以上、優:80点以上、良:70点以上、可:60点以上、不可:60点未満


第1回 線形回帰方程式モデル

行列ベクトル表示による線形回帰方程式の定式化とその計測手順を述べることによって、受講生の回帰分析の内容と線形代数の知識を確認する。これと共に、モデルを構成する方程式の関数型に関する留意点を整理しておく。

第2回 最小2乗推定量

多次元確率変数ベクトルによる期待値ベクトル、分散共分散行列の定義を踏まえ、回帰方程式の係数推定量を攪乱項ベクトルの線形変換で表現する。そして標準的な仮定の下で計測される最小2乗推定量について、不偏性、一致性、有効性といった小標本および大標本に関する推測統計的な特性を線形数学を用いて明らかにしておく。

第3回 回帰モデルと仮説検定

回帰方程式に関わる様々な仮説検定の統計学的手法を理論的に考察しておく。その前提に、多次元確率変数ベクトルの線形変換およびその2次形式の確率分布、および複数の確率変数ベクトルの独立性の条件など、推測統計学的な内容を整理しておく。その上で、どのように検定方式を適応させ、活用するかを明確にしておく。

第4回 仮説検定とモデル選択

モデルにおける限界係数の制約条件に関する仮説検定や決定係数の仮説検定といった手法を活用して、手元のデータはどういった関数型の定式化がよりフィットするか、線形が適切か対数線形が適切か、構築するモデルの定式化は何が適切かといったことに一定の判断を与える手順を考える。

第5回 非線形回帰とノンパラメトリック・モデル

変数の変換によっても線形モデル化できない中で、非線形回帰モデルの定義を与え、一定の条件の下でモデルが推定可能となることを議論し、推定量の一致性や正規性といった大標本特性などを検討する。

第6回 最小メディアン2乗法、最小分位2乗法の考え方

最小メディアン2乗法、最小分位2乗法の考え方を取り上げる。そしてまた、ノンパラメトリック回帰で考察するモデルの考え方と、その統計的特性と計測手法の可能性について解説する。

第7回 モデルにおける外生変数と内生変数

一般的な回帰分析において、説明変数と攪乱項とは無相関であることが前提される。しかし現実にはそれらの前提が想定できない状況も非常に多い。攪乱項と無相関である外生性を保持する説明変数とそうではない内生的な説明変数とが生じる可能性を考察する。

第8回 操作変数推定法

回帰モデルの中で、内生変数が説明変数になっているケースでは、通常の最小2乗推定ではなく操作変数による推定によって、大標本的な特性である一致性が得られること、さらに操作変数推定は2段階最小2乗推定と同等であること等を議論する。

第9回 一般化回帰モデルと不均一分散

攪乱項の分散・共分散行列が、いわゆるスカラー行列にならないケースについて、そのモデルの定式化を与え、そうして、そのモデルに対しては一般化最小2乗推定によって有効性を保持する推定が可能であることを考察する。

第10回 一般化最小2乗推定

一般化回帰モデルを想定しなければならないのは、攪乱項の分散が不均一であるとき、あるいは攪乱項に系列的な相関があるとき等があげられる。ここで、攪乱項の分散が不均一であるケースを取り上げ、加重最小2乗推定の活用を考察する。これは、一般化最小2乗推定量の一致性や大標本特性を考察するのと同等である。

第11回 攪乱項の系列相関

攪乱項の系列相関は攪乱項の分散・共分散行列が、いわゆるスカラー行列にならないケースの一つである。攪乱項の系列相関の可能性、OLSの漸近的特性、およびDW検定、ラグ付き従属変数が含まれるケースなど系列相関の検定等を解説した後、一般化最小2乗推定を試みる考察をする。

第12回 系列相関と最尤推定

攪乱項に系列相関がある場合、分散共分散行列を明示的に取り上げ、最尤推定(ML)を活用することが考えられる。最尤推定を利用する手順と、得られる推定量の統計学的な特性を解説する。

第13回 多数の方程式からなるモデル

経済関係式を地域ごとに考察する、あるいは産業ごとに考察するといった場合、モデルは多数の方程式からなる。見かけ上で相関のない回帰モデルの考察とともに、連立性によって生じる制約条件をいかに整合的に推定するかを考察する。

第14回 連立方程式体系

ある一つの市場における需給の均衡関係をモデル化する場合、モデルはいわゆる連立方程式で表現される。まず、体系内の各方程式が意味ある計測になるには、方程式の識別問題が重要である。次に、連立方程式体系からなるモデルの有効な推定法が考察される。

第15回 白書・論文に基づく討議

講義で扱う考察を採り入れた最近の論文あるいは白書などの記事を取り上げ、解説すると共に、授業中に討議する。