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    授業内容詳細

 心理学
   Psychology
授業科目区分
共通教育科目・一般教養科目(人文分野)
担当者 竹井 夏生(講師)
グレード G2
テーマ 自分や他者、社会を大切に思うことができるための一助として、心理学という学問に触れてみる。
キーワード 心理療法(セラピーあるいはカウンセリング),精神病理学,自閉症スペクトラム,統合失調症,深層心理学,アイデンティティ,トラウマ,病跡学(pathography)
開講年度
2017
開講時期
配当年次
1・2・3・4
単位数
2

授業の目的及び概要 心理学は、心を科学的に解明する学問である。この授業では、他者や自分の気持ちを論理的、客観的に理解する機会を提供する。授業の目的は、初めて心理学に触れる履修生に自己を客観的に見つめる機会を与えることで、主観的な世界から飛び出し、自分を知り、社会の中で自信をもって生きていけるような素地をつけることである。授業では、人の心への探求の始まりから、心を科学的に解明しようとする現代の心理学の世界について、身近に経験する事柄に結び付けながら解説する。
履修条件
科目の位置づけ(DP・CPとの関連) 共通教育科目群・一般教養科目(人文分野)であり、学問としての心理学に初めて触れる方を対象としています。
学修の到達目標 ・自らのこころにしっかりと向き合うことができるようになること。
・生きるうえで訪れる様々な精神的危機に対しても、粘り強く悩みぬいていけるようになること。
・他者のこころを大切に重んじることができるようになっていくこと。
授業の方法 講義を中心にする。
コメントシートやレポートを通して対話的学修を行うこともある。
レジュメを中心にして、power pointを用いることもある。
授業外の学修(予習・復習等) ・自分の関心に引っかかるところがあれば、しっかりと自分の実感に照らし合わせるようにして、何度も考える時間を持つようにすること。
・とりわけ関心を持ったテーマについては、紹介する文献等を中心に、自身のテーマとして研究を深めること。
テキスト・参考書 テキスト(教科書)は使用しない。レジュメを用意する。

以下を代表的な文献として講義の準備をしてくるので、関心のある受講生は直接手に取ってみるとよい。
自我論集(S.フロイト(著)、竹田青嗣(編)、中山元(訳))筑摩書房、1996
自閉症の子どもたち―心は本当に閉ざされているのか(酒木保(著))、PHP研究所、2001
自閉症の現象学(村上靖彦(著))、勁草書房、2008
自明性の喪失(W.ブランケンブルグ(著)、木村敏(訳))、みすず書房、1978
分裂病の現象学(木村敏(著))、筑摩書房、2012
ノルウェイの森(村上春樹(著))、講談社、1984
ユング自伝―思い出・夢・思想(1・2)(C.G.ユング(著)、河合隼雄(訳))、みすず書房、1972/1973
アイデンティティとライフサイクル(E.H.エリクソン(著)、西平直(訳))、誠信書房、2011
エリクソンの人間学(西平直(著))、東京大学出版会、1993
トラウマ・歴史・物語―持ち主なき出来事(キャシー・カルース(著)、下河辺美知子(訳))、みすず書房、2005
中原中也詩集(中原中也(著))、岩波文庫、1981
成績評価の基準・方法 ・講義への積極的参加、コメントペーパーの提出(20%)
・レポートの提出(30%)
・定期試験(50%)
によって評価する。
履修上の注意事項など 何らかの配慮を必要とする場合には直接ないし以下に連絡をください。
n-takei@s.keiho-u.ac.jp
この科目の履修にあたって 悩むこと、苦しむこと、傷つくこと、挫折すること、過ちをおかすこと、うまくいかないこと、立ち止まること、恐れること、怒ること、恨むこと―私が専門としている臨床心理学ないしセラピーの世界においては、それらを否定的で取り除くべきものと考えるよりは、人間としてより本質的なこととして重んじ、それらをしっかりと生き抜くことを通して、より生き生きとした自分自身になっていくという人間観が基盤にあるように思います。そのような懐の深い学問に私自身が助けられ、この学問や実践の深さに恐れおののき、今も尽きない魅力を感じています。
若い学生(別に若くなくてもいいですが)には、しっかりと悩みや苦しみを味わうことを通して、たくましく成長してほしいと願っています。講義の通底にはそのような思いがあることを感じてもらえればと思っています。
オフィスアワー -


第1回 心理学への導入―心理療法とは?(1)

「そもそも話すだけでよくなるのか?」、「セラピストは具体的なアドバイスをしてくれない」、「セラピーは心を見透かされているようでいい気がしない」―心理療法(セラピーあるいはカウンセリング)に対しては、しばしば様々な疑問や疑念、誤解が向けられる。そもそも心理療法とは、いかなる人間理解の基盤に立った、いかなる営みなのだろうか?セラピストのものの見方とは?クライエントが「治る」とは?典型事例をもとにして、心理療法という営みの中で行われていることについて紹介したい。

第2回 心理学への導入―心理療法とは?(2)

前回の内容を引き続き考えていく。

第3回 生理・知覚心理学―「私」の発生

「私はどこから来てどこへ向かって行くのか?」、「私はいかにして私になったのか?」―これら哲学的とも宗教的とも思春期的(?)ともいえる問いを、精神分析の始祖S.フロイトのテキストを手がかりに考えてみたい。

第4回 発達しょうがい学―自閉症スペクトラム者の可能性と希望(1)

私たちは、それを望む望まないに関わらず、「ことば」によって「もの(das ding)」の世界を翻訳し、また同時に「私」という個別的な存在を立ち上げていく。この発達過程における何らかの理由による滞りを「自閉症スペクトラム」と理解して、彼ら彼女らの体験世界に迫る。「ことば」による守りの薄い彼ら彼女らの世界体験は、ある意味「ありのまま(もの)」を見ているとも考えられるし、またそれゆえに守りのない不安に満ち満ちたものでもあるだろう。臨床事例や、当事者の著作・作品などを用いながら、自閉症スペクトラム者のもつ可能性と希望について考えてみたい。

第5回 発達しょうがい学―自閉症スペクトラム者の可能性と希望(2)

前回の内容を引き続き考えていく。

第6回 精神病理学―統合失調症(1)

「何かが抜けているんです。でも、それが何かということを言えないんです。何が足りないのか、それの名前が言えません。言えないんだけど、感じるんです」(ブランケンブルク『自明性の喪失』)、「ちゃんとした言葉っていうのはいつももう一人の私が抱えていて、こっちの私は絶対にそれに追いつけないの」(村上春樹『ノルウェイの森』)―これらは統合失調症体験の中から放たれた言葉であるが、この体験に迫り、このような体験が起こる(目には見えない)こころの構造を見て取る試みが精神病理学(現象学)である。その試みをしてみたい。

第7回 精神病理学―統合失調症(2)

前回の内容を引き続き考えていく。

第8回 深層心理学―こころの深層・こころの古層(1)

C.G.ユングによれば、私たちのこころの最深部は、古今東西の全人類と通底しているだけでなく、他の動物や植物ともつながった世界が広がっているという。その世界の風景とは?またそのようなこころの構造を想定したときに、こころの病に対してのどのようなアプローチが考えられるのだろうか?

第9回 深層心理学―こころの深層・こころの古層(2)

前回の内容を引き続き考えていく。

第10回 発達心理学―「アイデンティティ」の誤解を解く(1)

今や中学・高校の教科書にも登場する「アイデンティティ(identity)」。ただ、この概念を提唱したE.H.エリクソンの初発の思いとは、それは大きくかけ離れたものとして理解されているきらいがある。長らくアイデンティティ拡散(identity diffusion)を生きた彼のテキストから、その真意を汲み取っていく。アイデンティティとは決して「達成課題」ではなく、不安定な「私」の揺らぎを生きる人々のための言葉である。

第11回 発達心理学―「アイデンティティ」の誤解を解く(2)

アイデンティティが戦争を引き起こす?アイデンティティを明け渡すことによって新たに獲得されるアイデンティティ?ここではアイデンティティ思想の深みに触れていく。

第12回 トラウマ―「傷」と「出会い」(1)

「トラウマ」はすっかり日常用語として用いられるようになっているが、それはそもそも「表象不可能なもの(言葉によっては言い表せないもの)」、「決して私たちの内に取り込む(comprendre)ことのできないもの」の謂いである。そしてそれは(どういうわけか)不思議な「筋立て(intrigue)」によって、他者との「出会い(rencontre)」に開かれているという。この「トラウマ」という謎めいた概念について、精神分析のテキスト、聖書、映画などを素材にしながら考えてみたい。

第13回 トラウマ―「傷」と「出会い」(2)

前回の内容を引き続き考えていく。

第14回 病跡学―病むことの力

「愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません」(春日狂騒/1937)―詩人・中原中也(1907-1937)は、晩年激しい精神的失調に陥り精神科病院への入院も経験するが、その危機の中でいくつもの珠玉の作品を残している。この「病い」と「創造」のダイナミズムについて、彼の詩作品と人生を追いながら考えてみたい。

第15回 むすび

これまでの講義の振り返る。