連続講座I

『格差社会と不安』
開講日:10月12日(金)、11月9日(金)、12月21日(金)


「格差社会」ということばは、すでに使い古されて(常識となって?)インパクトを失いつつある。格差の拡大は、生存すらおびやかされる貧困層を大量に生み出した。「人に迷惑をかけるな」という教え、「自己責任」という倫理によって、弱者に対して厳しく冷たい目が向けられ、弱者自身も自分自身を責める。誰もが、明るい未来を思い描くことができず、不安と閉塞感を抱えている一方で、過去ばかりが美化される。「不安社会」と呼ぶこともできる現代の日本社会を読み解き、認識を共有することが本講座の第一の目的である。共通の認識に立った上で、現状を切り開くために、克服すべき課題は何であるのか、どこから手をつけて行ったらよいのかを参加者とともに考えたい。

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第1回  10/12(金):不安社会と排除される弱者たち
講師:芹沢一也(慶応義塾大学非常勤講師)

〈講義内容〉
わたしたちの社会は95年の地下鉄サリン事件以来、ラディカルに変容した。それは被害者の精神的痛みに耳を傾ける社会への変容である。だが、それ自体はきわめて肯定的なこの変容が、皮肉なことにリスクに対して過剰に敏感なメンタリティを育み、そして弱者に対して排他的な社会を生み出してしまった。本講義ではこうしたねじれを見据えながら、現在の「不安社会」を支えている力学を明らかにする。


〈講師プロフィール〉
Synodos主宰。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程を修了。慶應義塾大学、京都造形芸術大学、朝日カルチャーセンターなどにて講師。社会学を専攻する傍ら、大正期を中心とする近代日本の思想や文化、社会に研究分野を広げる。専門は近代日本思想史・文化史。著書に『犯罪不安社会』(共著、光文社新書)、『ホラーハウス社会』(講談社+α新書)、『狂気と犯罪』(講談社+α新書)、『〈法〉から解放される権力』(新曜社)。現在、朝日新聞社『論座』にて季評を連載中。


第2回  11/9(金):自由な社会と貧困─フランスにおける社会的排除
講師:稲葉奈々子(茨城大学教員)

〈講義内容〉
「もっと働いて、もっと稼ぐ社会を」。2007年5月、大統領に就任したサルコジのスローガンのひとつである。失業者は働くのが嫌いで失業手当をあてにする怠け者と糾弾され、勤勉な人が仕事に見合った報酬を得る社会が理想として掲げられた。しかし、実際には、マクドナルドでのアルバイトやホテルの清掃業など、低賃金の仕事を複数かけもちしても、貧困ライン以下の生活を強いられる者が数百万人にのぼる。このような現状に対して、不安定就労層が、社会的排除と不安定な社会的地位に反対して声をあげはじめたのが90年代末以降のことである。講座では、フランスの不安定就労の現状と、これに抗する社会運動を紹介する。


〈講師プロフィール〉
1968年5月生まれ、茨城大学教員。大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員。フランスの失業者やホームレスなど都市底辺層の社会運動研究を専門とし、現在は、新自由主義的なグローバル化に反対してサミットで数万人が参加するデモなど、グローバル化と貧困をめぐる社会運動を中心に社会調査を行っている。おもな論文は、「『持たざる者』からの脱出:そして何処へ」『現代思想』2006年、第34巻第9号など。


第3回  12/21(金):新しい貧困と暴動・戦争
<対談形式> 雨宮処凛(作家) 聞き手・中西弘一

〈講義内容〉
「憲法9条改正阻止! いまの平和を守ろう!」という訴えは、生存すらおびやかされる「ワーキングプア」と言われる人びとには届かない。この「平和」が続くこと自体が「戦場」に閉じ込められることなのだから。いっそ、ほんものの戦争になってしまった方が、今よりはマシだ……。そんなふうにすら思う人びとに届くことばとは? 「自己責任」の名の下に分断され、相互に排除し合うわれわれが「連帯」するために何が必要かを、世代とイデオロギーを越えて人びとをつなぐことばを発しつづける雨宮処凛さんとともに考えたい。


〈講師プロフィール(雨宮処凛)〉
1975年北海道生まれ。作家。元パンク歌手&元政治活動家。自己経験を元に描いた『生き地獄天国』(太田出版)をはじめ『自殺のコスト』(太田出版)、『暴力恋愛』(講談社)、『EXIT』(新潮社)など数多くの著作を生み出している。ドキュメント映画『新しい神様』(監督・土屋豊)に出演。活動の幅を広げている。



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(※この講座は東京麻布台セミナーハウスで開催される講座です)

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<お問い合せ先> 大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター
〒106-0041 東京都港区麻布台1-11-5 東京麻布台セミナーハウス
TEL:03-5545-7789 FAX:03-5545-7788 E-mail:ouelcapp@st.keiho-u.ac.jp